第6回 障害福祉サービス事業の基礎のキソ⑥(運営基準)

運営に関する基準とは、サービス提供の方法や利用者の権利擁護、記録の保管など、事業運営の具体的なルールを定めたものです。この基準は障害者総合支援法や児童福祉法に基づく省令で規定されており、すべての事業者が遵守しなければなりません。
障害福祉サービス事業は財源を税金としていますので、運営に関しても行政の定めた基準に従うことが求められます。この基準に沿った運営ができていないと運営指導で指摘された場合、是正が求められ、状況によっては減算につながりかねません。また、最悪、指定の取消しさえあり得ます。
(指定障害福祉サービスの事業の基準)
第四十三条2 指定障害福祉サービス事業者は、都道府県の条例で定める指定障害福祉サービスの事業の設備及び運営に関する基準に従い、指定障害福祉サービスを提供しなければならない。
3 都道府県が前二項の条例を定めるに当たっては、第一号から第三号までに掲げる事項については主務省令で定める基準に従い定めるものとし、第四号に掲げる事項については主務省令で定める基準を標準として定めるものとし、その他の事項については主務省令で定める基準を参酌するものとする。
一 指定障害福祉サービスに従事する従業者及びその員数
二 指定障害福祉サービスの事業に係る居室及び病室の床面積
三 指定障害福祉サービスの事業の運営に関する事項であって、障害者又は障害児の保護者のサービスの適切な利用の確保、障害者等の適切な処遇及び安全の確保並びに秘密の保持等に密接に関連するものとして主務省令で定めるもの
四 指定障害福祉サービスの事業に係る利用定員2 指定障害福祉サービス事業者は、都道府県の条例で定める指定障害福祉サービスの事業の設備及び運営に関する基準に従い、指定障害福祉サービスを提供しなければならない。
3 都道府県が前二項の条例を定めるに当たっては、第一号から第三号までに掲げる事項については主務省令で定める基準に従い定めるものとし、第四号に掲げる事項については主務省令で定める基準を標準として定めるものとし、その他の事項については主務省令で定める基準を参酌するものとする。
一 指定障害福祉サービスに従事する従業者及びその員数
二 指定障害福祉サービスの事業に係る居室及び病室の床面積
三 指定障害福祉サービスの事業の運営に関する事項であって、障害者又は障害児の保護者のサービスの適切な利用の確保、障害者等の適切な処遇及び安全の確保並びに秘密の保持等に密接に関連するものとして主務省令で定めるもの
四 指定障害福祉サービスの事業に係る利用定員引用:障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律|e-Gov法
(利用定員)
第十一条 指定児童発達支援事業所は、その利用定員を十人以上とする。ただし、主として重症心身障害児を通わせる指定児童発達支援事業所(児童発達支援センターであるものを除く。)にあっては、利用定員を五人以上とすることができる。引用:児童福祉法に基づく指定通所支援の事業等の人員、設備及び運営に関する基準|e-Gov法
サービス種別ごと法令で内容が定めれておりますが、児童発達支援を例に挙げると以下について義務的な定めがあります。
- 利用定員
- 内容及び手続きの説明と同意
- 契約支給量の報告等
- 提供拒否の禁止
- サービス提供困難時の対応
- 受給資格の確認
- 障害児通所給付費の支給の申請の援助
- サービス提供の記録
- 事業者が保護者に求めることのできる金銭の支払の範囲とその同意
- 利用者負担額の管理
- 障害児通所給付費の額の通知等
- 事業所の自己評価及び保護者評価等の公表
- 児童発達支援計画の作成等
- 障害児の健康管理
- 緊急時等の対応
- 管理者・児発管の責務
- 運営規程
- 勤務体制の確保等
- 業務継続計画の策定等
- 定員の遵守
- 非常災害対策
- 安全計画の策定
- 自動車を運行する場合の所在の確認
- 衛生管理等
- 協力医療機関の定め
- 運営規程、従業者の勤務体制等の事業所内掲示
- 身体拘束等の禁止
- 虐待当の禁止
- 秘密保持
- 情報の提供等
- 利益供与等の禁止
- 苦情解決
- 事故発生時の対応
- 会計の区分
- 記録の整備
主な運営基準
1. 内容及び手続きの説明と同意
事業者は、サービス開始前に重要事項説明書を用いて、サービス内容、利用料金、苦情処理体制などを利用者や家族に説明し、同意を得る必要があります。
2. 提供拒否の禁止
正当な理由なく児童発達支援のサービス提供を拒むことはできません。
3. サービス提供記録の作成・保管
サービス提供の記録を作成し、完結の日から5年間保存する必要があります。
3. 児童発達支援支援計画の作成
児童一人ひとりの状況やニーズに応じた個別の支援計画を作成し、定期的に見直すことが義務付けられています。
4. 秘密保持と個人情報保護
従業者は、業務上知り得た利用者や家族の秘密を保持する義務があります。また、個人情報を適切に管理する必要があります。
5. 苦情解決の仕組み
利用者からの苦情に迅速かつ適切に対応する体制を整備し、苦情内容を記録する必要があります。
6. 事故発生時の対応
事故発生時の対応マニュアルを整備し、事故が発生した場合は速やかに市町村や家族等に連絡し、必要な措置を講じる必要があります。
7. 虐待防止等
虐待防止のための責任者の設置、委員会の開催、研修実施、身体拘束等の適正化などが義務付けられています。
運営基準遵守のためのポイント
1. 運営規程の整備
事業所の運営方針、従業者の職種・員数、営業時間、サービス内容と利用料、通常の事業の実施地域、緊急時の対応方法などを定めた運営規程を整備し、職員に周知する必要があります。
2. 研修体制の充実
職員の資質向上のための研修を計画的に実施することが求められます。特に虐待防止、身体拘束、感染症対策、業務継続計画などの研修は減算にかかわってくるため特に重要です。
3. コンプライアンス体制の構築
法令遵守の責任者を設置し、定期的な自己点検や内部監査を実施することで、運営基準に沿ったサービス提供を継続的に確保します。
4. 情報公開と透明性の確保
運営規程やサービス内容、苦情解決体制、自己評価結果などの情報を公開し、サービスの透明性を高めることが重要です。
まとめ
障害福祉サービスの運営に関する基準は、利用者の権利を守り、質の高いサービスを提供するための重要な枠組みです。これらの基準を十分理解し、日々の運営に反映させることが求められます。
また、利用者や家族の方々も、これらの運営基準を知ることで、適切なサービスを選択し、必要に応じて改善を求める際の判断基準とすることができます。ただし、運営基準はあくまで最低限の基準ですので、より良いサービスや特徴あるサービスを実現していくためには、事業者と利用者・保護者が協力し、サービスの質を向上させていくことが必要となります。