第5回 矯正展を知っていますか?

 刑務所の世界は、固く閉ざされた密室のようなところを想像している方は少なくないです。そして、おおむねそれは間違っておりません。個人情報のなかでも最もセンシティブな情報が集まっていることから当然ともいえます。
 しかし、刑務所といえど日本の行政機関である以上、国民の理解を得て運営を進めていく必要があります。刑務所という場だからこそ、民間の方の意見、外部の目を取り入れて、世間の常識から離れないようにしています。その代表的な存在が、視察委員会です。また、改善更生の協力者として、教誨師や篤志面接委員の方がいらっしゃいます。ただ、そうなると一般の方はどうやって刑務所の運営なんてものを知ることができるのか。その一つは「矯正展」です。

 矯正展は矯正行政の広報の一環ですが、いわば「お祭り」なのです。出店が出て、刑務所で作っているもの(刑務所作業製品)が販売され、刑務所内を見学することができます。

 刑務所で作っているものなんてなにがあるの?と思うかもしれません。おそらく日本で一番有名な刑務所作業製品は、「ブルースティック」です。横浜刑務所の製品ですが、これはワイシャツの襟や袖の汚れをピンポイントでこすり落とす石けんです。その名前のとおりスティック状になっており、力をこめやすくなっています。子どもの汚れた上履きにこれでもかというくらい力強くこすりつけてやり、お湯で洗い流すと、驚きの白さに元通りです。

 私のお気に入りは、岐阜刑務所の「阜岐塗り」です。岐阜刑務所は木工家具で有名ですが、私はこれです。実は内部のコンクール受賞製品です。漆の上にガラスを吹き、見るも美しい盃が心を癒してくれます。あいにく贈り物として購入したため、手元にはありませんが、きっと喜んでくれたと思います。ただ、包装はあっさりしているので、中身にふさわしい包装に変えてあげるともっと価値が上がって喜ばれることでしょう。

 名古屋刑務所では被収容者が実際に食べている「パン」を購入できます。ふわふわで普通においしいですが、なにより塀の中で自由を制限され、普段の主食は米:麦が7:3のごはんを食べている人の気持ちになって、たまに食べられるパンを口にしてみるというシチュエーションを想像して、「ああ、自由っていいな。パンがおいしいな。」と自由のありがたさを味わえるかもしれません。名古屋刑務所は敷地が広いので、刑務所内の見学は見応えがあります。

 三重刑務所の製品では幼児用の机と椅子、積み木などを買ったことがあります。木の製品がこの価格!と目を丸くするかもしれません。

 笠松刑務所で有名な製品は七宝焼です。実はこの製品は被収容者の中でもごく限られた人しか作れません。技術習得も難しく、繊細な手つきとセンスが要求されます。作る人によって味わいが変わり、同じものは一つとしてありません。私のおすすめは七宝焼の髪留めです。今もあるのかな?

 このブログを書いている現在、北陸の刑務所の矯正展は終わってしまっているようですが、東海はまだまだこれからです。矯正展のスケジュールは以下にリンクを貼っておきます。スケジューリングとして、同じ日に同じ管区内で日程がバッティングすることはないように調整されています。そのため、今週は都合が悪くても、別の日にどこかでやっていますので、気になるところに足を運んでみてください。行ったことのない方はかなり混雑していることに驚かれるかもしれません。ちなみに、岐阜刑務所は明日、10月11日(土)です。

 なお、名古屋刑務所の矯正展は東海ではもっとも規模が大きく、東海ではここでしか買えないものもあります。また、少年院の少年たちが作った製品も売っていたり、内部のコンクールで受賞した被収容者や少年たちの絵画や書の作品も展示されています。矯正展はじめての方はまずここから行ってみるといいでしょう。

↑<矯正展について>がスケジュールです。けっこう下までスクロールします。

https://www.instagram.com/capic01official/p/DO9-Jqgk15H

↑インスタのリンクも貼っておきます。岐阜刑務所はなんと「ブルースティック」を限定で来場者にプレゼントするみたいですね。ウチもなくなってきたからそろそろほしい…。

目次